今、ここであなたに誓わせて
大きな目が不安げに叔母さんを見つめる。うん、だけどね、と言う叔母さんにりんの目から大粒の涙が零れ始めた。
「やだっ!いやだ、いやだ、いやだ!お兄ちゃんといっしょがいい!」
久しぶりに大きな声を上げて泣くりん。我慢していた分を吐き出すような泣きっぷりだった。そして俺のお腹を苦しい位にぎゅっと抱きしめてそのまま動こうとしない。そのまま涙と鼻水を俺の服で拭う。仕事ばかりの俺に、こんなに懐いているとは思っていなかったのか、その姿にさすがに可哀想に思ったようで、りんにごめんねと声をかける叔母さん。
「りんちゃん、ごめんね。もう叔母ちゃんちに連れて行くなんて言わないから、泣かないで。りんちゃんはお兄ちゃんが大好きなのね」
「……うん」
「叔母ちゃん、嫌われちゃったかしら?また会いに来てもいい?」
「うん」
目を擦りながら叔母ちゃんの方を振り向いて答えるりんに、ほっとしたようで叔母さん達はそのまま帰って行った。未だにぐずつくりんに優しく声をかける。
「りん、今日は買い物に行こうか」
「きょうは、くるまのがっこうおやすみなの?」
「うん、今日はもうお休みするよ。ほら出かける準備して」
そう言うと、ピンク色のポシェットを持ってフリフリの靴下に履き替えてきた。りんと手を繋いでデパートへ向かうと、そこでずっと欲しがっていたプリキューティーのコンパクトを買ってやった。家に帰っても浮足立ったままで、コンパクトを片手に合ってるんだか合ってないんだか分からない呪文を唱えてへんてこな踊りを踊っている。
「りん、明日の夜はまたおばちゃんちだけど大丈夫?」
「だいじょうぶ。りんまってるよ、お兄ちゃんがむかえに来てくれるの。ちゃんといい子にいしてまてるよ」
そんな素直で健気で可愛い妹。
しかしそんな可愛い時期もあっという間に過ぎ去り、小学校に上がり中学年に上がる頃にはすっかりおませな女の子になり、そして反抗期を迎えるのだった。