今、ここであなたに誓わせて
9才/22才
あれから社長の家族の全面協力の元、技能試験も車の免許も合格した俺。
あの時はここが一番の正念場かと思ったが、そうでもなく次は妹の反抗期と突入するのであった。
妹は9才になり小学校3年生になっていた。そして俺は社会人4年目の22才となっていた。無駄遣いせず真面目に働いてきたおかげで貯金もある程度貯まり、多感な時期を迎える妹と一緒に暮らすには6畳一間では手狭ということで、お互いの部屋を持てるように2LDKのアパートへ引っ越した。
「ねぇ、今度家で料理作りたい」
「だめだ、危ないから」
「なんで調理実習でやってるよ?」
「学校では先生が見てくれてるけど、家では俺の帰りも遅いしずっと誰かが見ている訳にはいかないだろ。怪我したらどうすんだよ」
「でも私、多分お兄ちゃんより上手に作れる」
そう言って嫌味ったらしく、味噌汁の中で繋がった油揚げを箸で引き上げ俺へ見せる。
そして翌日の朝には俺が起きる前からエプロンを身に着け朝食を作る姿が。いつの間に覚えたのやら綺麗な卵焼きを作って見せ、味噌汁と納豆を出してきた。しまいにはコンロから焼き鮭が出てきて思わず唖然とする。そんな俺に構わず淡々とこなしていくりん。
「りん、いつの間にこんなにできるようになったの?お兄ちゃんびっくりだよ」
「なんで?お兄ちゃんがやってたことを真似してるだけだよ」
「だけど、やっぱり火を使うのは危ないからさ」
「だから大丈夫だってば」
この頃からだんだん俺の言うことを聞かなくなるようになり、夜も簡単な料理を作って待っているようになった。小さい頃からおばさんや亜弓ちゃんのお手伝いをしていたからか、料理だけではなく掃除、洗濯といった一通りの家事をこなすようになる。
学校からの通信簿も文句の付けどころがなく、学校での優等生ぶりが容易に想像できた。そんな妹の成長に感慨深げに浸るも、俺へのあたりは日に日にクールになっていった。
季節は巡り巡って、冬。身の寒さも合間ってかその妹の変化には寂しさを募らせた。