今、ここであなたに誓わせて

「りん、お兄ちゃんインフルエンザになっちゃったから2~3日部屋こもるから」
「え、大丈夫?」
「大丈夫、その間一人でご飯食べてちゃんと学校行けるな?あとうつるから絶対部屋には入るなよ」

珍しく心配そうにうんと頷くりん。咳き込み始めたため、りんにうつさないようポカリスエットだけ持って部屋へ閉じこもる。そしてその日のうちに、職場へインフルだったことを伝えた。


ひどくだるく、喉が痛い。インフルエンザになったのはいつぶりだろうか。床に伏して、りんの小さい頃を思い出した。水疱瘡やらおたふく風邪、はしか、一年に一回は何かしらかかってはその度におばさんにお世話になっていた。

目を閉じてうとうとしていると、家のインターホンが鳴った。パタパタとりんが玄関先へ走る音が聞こえる。誰だろう、ぼやっとした意識の中で考えていると亜弓ちゃんの声がした。彼女は高校を卒業してから、実家の経理として勤め始めていた。俺がインフルエンザにかかったと聞いたおばさんに様子を見て来いとせっつかれたのかもしれない。

俺の部屋のドアが開いて暗い部屋にリビングの光が差す。そこにはマスクをした亜弓ちゃんの姿が。

「珍しく本当に体調悪そうだね」
「はい、インフルエンザですから」
「馬鹿は風邪ひかないって言うの絶対嘘だよね。うちのスタッフ次々とやられていくもん」
「風邪と一緒にすんなよ」
「卵粥作って来たの、食べれそう?」
「マジで?ありがとう」
「今温めてくるね」

そう言ってドアが閉じられ、また部屋に暗闇が戻る。何か部屋の外で二人が話す声が聞こえるが、俺に気を使って声量抑え目で話しているせいか内容までは分からなかった。しばらくするとほかほかの卵粥がおぼんに乗ってやってきた。

「自分で食べれる?」
「食べさせてくれんの?」

は?とでも言いたげな、明らかに嫌そうな顔をする亜弓ちゃんに思わず吹き出す。

「あからさまだな、自分で食べれるよ。りんはもうご飯食べた?」
「これから一緒に作って食べる。勝手に冷蔵庫のもの使わせてもらうよ」
「あー、悪いな、ありがとう」




< 20 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop