今、ここであなたに誓わせて
「でもそれで勝ったとしてもりんちゃんのおかげだし。私がお荷物なのには変わりないし。それで勝ったって喜べるかどうか」
ぐいぐい半ば強引に引っ張る私に、後ろでぐちぐち言う彼女。
「大丈夫、絶対勝つから」
そう言う私に、「だから、そういう問題じゃない」と続ける小百合ちゃん。
私にとっては一年に一回の大好きな運動会、それを無理矢理楽しませようとするのは、本当有難迷惑というか大きなお世話なのかもしれないけれど。だけど小百合ちゃんのお母さんの気持ちも分かるのだ。
人生の中で運動会というものが決して楽しいものである必要はないけど最初で最後の運動会と聞いてしまえば、少しでも良かったと思える思い出が残って欲しいと思う。
渋る小百合ちゃんから先生に承諾を得て、早速作戦を練る。
「いちにーさんで渡すのパシッて」
「何その適当な説明。ぶっつけ本番で無理だよ」
「無理じゃないよ、小百合ちゃん指揮者やったんだからリズム取るの上手でしょ?」
「それとは全然違うっ」
「でも私本気でスタートするから絶対繋いでよ」
「えーっ!?」
玉入れは現在数を数えているところ。ひとーつ、ふたーつ、と高く投げられる玉。少しでも長引いて、と願いながら小百合ちゃんとバトンパスの練習をする。その姿を見ていた、リレーメンバーのこそこそ話が耳に入った。
「りんちゃん走るっぽいよ」
「げーうそ」
「ほらバトンパスの練習してる」
「本当だ」
「でも二人でってずるくない?」
「いや一人特大ハンデだからどっこいどっこいでしょ」
さすがに聞き捨てならなくて一言言ってやろうかと思ったら、そこへ我らのアンカー登場。
「りん、走るんだってな」
「そう絶対優勝するからね」
「いやいや、ハンデでか過ぎるでしょ」
そう言って小百合ちゃんを見る真也。女の子たちとは違って悪気のない馬鹿正直な真也のケツを思い切り蹴る。
「100mあれば余裕で追い抜ける、一番でバトン渡すから絶対に優勝してよ」
「いやいやいや、簡単に言うけどアンカーの猛者ども見てみろって」
「情けないなぁ、皆お馴染みのメンツでしょ。なんなら私んとこのメンツも一緒だわ」
「あー……、なんか本当毎回お馴染みのメンバーなんだけどさ。なんで足の早い女って気強いのばっかなんだろうな」
「そうそう、そんなとこにこの子が混ざって走るんだよ?まるで狼の群れにいるウサギちゃんって感じでしょ?」
「あぁ確かに」