今、ここであなたに誓わせて
結果は2位だった。真也も必死に走ってくれたけど追いつけなかった。その後、体育の先生からはバトンパスだけだったら優勝って言ってくれた程、私達のギリギリのバトンパスはどこにいっても賞賛された。
だけど本当は紺色のバッヂが欲しかった。優勝しなきゃ意味がなかった。それは真也も一緒で、入賞で2人並ばされても不貞腐れ過ぎて注意された。
そんな私達を見て小百合ちゃんが笑った。本当は紺色のバッヂを彼女にあげたかった、その手には願った色のバッヂではないけれど彼女は嬉しそうに笑ってくれた。
「バトン繋げて良かった。りんちゃん本当に本気で走るからハラハラしたよ」
「でもあのパシって瞬間気持ち良くなかった?」
「うん、バッジも嬉しい。2人ともありがとう」
ちょっとうじうじ暗い子だとばかり思っていたけれど、色白の頬をピンク色にしながらニコニコ笑う小百合ちゃんは思いのほか可愛くて私の横にいた真也も嬉しそうに照れていた。そのバッヂを持ってお母さんの元へ走っていく。その顔を見せてあげたら、きっとお母さんも喜んでくれる。
もう運動会も閉会式で終わりになる。その前に、私にもそろそろ奴がやって来そうだ。
「りん!凄いな、おめでとうっ」
「ありがとう」
「でもリレー出ないって言ってたのにどうしたんだ?鼓笛隊も今年はバトンになってるし」
「色々あって」
「なんだ色々って」
めんどくさいからそう言って誤魔化す。何度かしつこく聞かれだが、段々私の声が苛立ってきたことに気付くと途端に静かになった。お兄ちゃんがそうやって心配してくれるのは分かる。だけどこれだけ私に尽くしてくれているお兄ちゃんに、余計な心労をかけたくない。
親がいないからって、学習発表会では端っこで目立たない役回りをさせられていたことを、鼓笛隊では最後の最後でバトンをやらせてもらうまでずっとリコーダーだったことを。リレーもそんな同じような理由で外されてしまったことを。
私自身は別に耐えられる。だけど、楽しみに見に来てくれるお兄ちゃんに少しでも良いところを見せてあげたかった。リレーが一番の見せ場だったから、最初はそれを取られてしまったことが悲しかったし悔しかった。
結果、無事リレーを走ることができてこうやって喜んでくれたから良かったけど。
私が悲しい時、私以上に悲しんで色々めんどくさいけど、でも私が嬉しい時、私以上に喜んでくれる。まるで自分のことのように。
私もそれが嬉しいというか、凄く幸せなことなんだと思った。