今、ここであなたに誓わせて

その言葉を聞いて、そうだこれ以上兄に心配をかける訳にはいかないと思った。だけど、私のせいで別れさせてしまったと思うと本当に辛くて胸が苦しくなる。早く兄から自立して、そして二人によりを戻してもらう。それしか手はないと思った。

ここにきてちょうど三者面談が入り、学校で進路希望用紙を配られた。今まで漠然と周りと同じように高校へ行くもんだとばかり思っていたが、自分の状況を改めて考えさせらた。中学校までは義務教育でも高校は違う、中卒で就職しても職種は限られるかもしれないが生活する分は稼げるかもしれない。それに住み込みで働けば生活費だって大分抑えられる。

私は皆とは違うのだ。今まで周りと同じように育てられてきたのは、全て兄の犠牲に成り立っていたもの。でももうこのままじゃいけない。このままじゃ兄の人生を壊してしまう。

だけどそんな理由で第一希望に就職を書けば絶対反対されることは目に見えている。私はそこに職種とちゃんとした理由を添えて提出した。もしかしたら再提出って言われるかもしれないと思っていたけど、私の家庭環境を分かっているからか渋い顔をしながらも受け取ってもらえた。

「……これはお兄さんと話し合っての希望なの?」
「はい、よろしくお願いします。」

私は先生にそう尋ねられ、思わず嘘をついてしまった。だけど、お兄ちゃんだって明確な理由があれば反対しない。私の自立のためにはなるべくあの家を出ないといけないのだ。



そしていよいよ進路相談日。時間通りにやってきた兄

「進路希望なんですが、お二人で相談されていたということで就職ということでよろしいでしょうか」
「え?」
「第一希望欄に就職と書かれ、住み込みで仲居さんの仕事をしたいと聞いていますが、お兄さんの方では伺っていませんでしたか?」
「はい、初めて聞きました。えっとすいません、普通に高校に上げるつもりで考えていたものですからちょっとびっくりしちゃって」
「私も高校へは行った方が良いと思っています。凜花さんの成績ですと近くの公立でしたらどこでも入れるような申し分ないものですし。凜花さんに行く気があるならですが……」
「先生二人でよく話し合ってくるので、とりあえず進学ということで進めてもらっていて良いですか?」
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