今、ここであなたに誓わせて
そして、後日本当に連れてくるとは。
その日は貴重な休日の昼下がり、呼び出し音もなくガチャっといきなりドアが開く音がした。凜が帰って来たのだろうと思っていたら、次の瞬間玄関先から「おにいちゃーん」と、大きな声で呼ばれ何事かと顔を出す。そこには見知らぬ輩が一匹、いらぬおまけがひっついており俺はあからさまに不機嫌そうな顔をしてやった。
「ちゃんと付き合うことになったから連れてきたよ。こちら隆君」
「は?付き合う?」
「ほらこの前言ってた彼氏っぽい人がいるって言ってたでしょ?」
「そうか、じゃまず彼氏とは何か説明してみなさい。話はそれからだ。君にも聞くからな」
うちの敷居を跨ぐのはそれからだと、腕を組みながら二人の前に立ちはだかり、そう言って玄関先で問い詰めた。そんな俺に、凜の後ろにいる男の子はびっくりしたように目を丸くしている。その制服は、隣町の私立高校のもの。髪型も自然にセットされ、制服姿も着崩されることなく全体的に清潔感がある。
「はぁー、お兄さん、まだお若いのになかなか頭固いっすね」
「あ?」
見た目とは裏腹になかなか不躾なそいつに、大人げなく怒りを露わにする。一瞬ピリっとした空間を壊すかのように、俺の後ろから明るい声が会話に乱入してきた。
「あはは、本当その通りだよ。どうぞ入って、今お茶入れるから」
「お前の家じゃないだろ」
そう今日はたまたま亜弓ちゃんが来ていたのだ。その彼女の登場に凜が分かりやすく安堵する。
「良かったー、ちょうど亜弓ちゃんがいてくれて」
しかし俺の方はイラ立ちが収まらない。
「彼氏って……、ついこの前までランドセル背負ってたくせに」
「いいじゃん彼氏位、許してあげなよ。別にさ、子ども作ったって訳じゃないんだから」
「ぶぶっ、冗談じゃない。そんな話、凜の前でやめてくれ」
「まさか子どもの作り方知らないとでも思ってるの。凜ちゃんだってね、いつまでも無垢な天使って訳じゃないんだから。本当若いくせに、どうしてそんなに頭が固いの?本当にまだ20代?」
「ギリギリ20代だっての」
「中身割って見てみたい位」
そう言って難しそうな顔をしながら俺の頭をこんこんと叩く。俺は思わずその煩わしい手を振り払った。
「叩くなって」