今、ここであなたに誓わせて
そんなギリギリの生活を送っていた中、事件は起きた。
二階程の高さがある足場から落下したのだった。運良く落ちた先は土で、怪我もなく意識もしっかりしていた。念のため病院で検査をと言われ受診したが異常なし、ということで足早に事務所へ帰って来た時には陽はすっかり落ちもう夜になっていた。りんを迎えに行かなくてはと急いで職場を後にしようとしたところ、先輩達に声をかけられた。
「今日みたいなのマジで命取りだから勘弁して、お前だけの問題じゃなくて俺達も。工具一つ落として下の通行人にでも当たったらお前責任取れんの?」
「お前さ、どうせ早く家に帰って夜な夜なゲームでもやってんだろ?」
「もうやめたら?なめてんのかもしんないけど自己管理もできねぇでこの仕事勤まんねぇよ」
「秀明高校出身らしいけど、おぼっちゃんらしくちゃんと就活すれば?」
悔しいと歯がゆく思っても今日起こしてしまった事件は事実で、全て自分の責任だ。俺は先輩の言うことを全て飲み込んで、頭を下げた。
「すいません、二度とないよう気を付けますので、まだここで働かせてください」
そう言って深々と頭を下げる俺の背後から聞き慣れた子供の声がした。
「にいしゃん、いじめられてるの?」
振り向くとそこには、何故かりんがいた。眉を八の字にして頭を下げる俺に首を傾げている。
「なんでお前ここに……っ」
慌てる俺に続けざまに入口から社長が入ってくる。社長は昔ながらの職人気質な人というか、無口でぶっきらぼうな人だった。俺が落ちた時もざわつく中一人冷静で、近くの病院まで車で運んでくれたのだった。
「お前が病院に行っている間、保育園から連絡があって家内が代わりにお前の妹を迎えに行ってきた」
いつもの感情を読み取れない抑揚のない喋り、だけどその内容に嫌な汗が出た。職場には妹の存在は秘密にしていたのだ。
「妹と二人暮らししてるんだそうだな。なんで面接の時に言わなかった?」
「……すいません、雇ってもらう時に支障になるかと思って」
バツが悪いように、自然と視線が下を向いてしまう。さすがにこれでは解雇されても仕方がない、そう覚悟していたのに社長から出てきた言葉は予想外のものだった。