～SPの彼に守られて～

◆プロローグ◆

　私、吉野千明＜よしのちあき＞は、只今夜道を猛ダッシュ中です。

「ハァ…、ハァ…」

　アスファルトをヒールで走ると足全体が痛くて、どうして私が猛ダッシュしなくちゃならないの？

　あそこに自動販売機があるからそこに陰に身を隠して、気付かれないようにしなくちゃ。

　自動販売機の陰に身を潜めて口をきつく結ぶと、こちらに向かって走る音が複数聞こえてきて、ギュッと瞼をつぶる。

　早くあっちに行って！！

「いたか？」
「いいえ、いねぇっす。取引を見られるなんて、ツイテねぇすね」
「グチグチ言ってねぇで、行くぞ！レオ様とドラゴンの兄貴に報告だ」
「へい」

　何？レオとドラゴンって？動物び名前？？？ドラマや映画に出てきそうな名前みたい。

　すぐ近くに男たちの声がして走り去るのが分かり、瞼を開けて自動販売機の陰からそ～っと頭を出して周囲を見渡すと、さっきの男の人たちの姿がなくて、やっとほっとできる。

　何でこうなっちゃったんだろ……、会社から帰るためにいつもの道を歩いていただけなのに、追いかけられるとは思わなかった。

　また追いかけてくるのかな？さっきの男たちが追いかけて来るのを考えると背筋がゾクッとし、これって警察に話した方がいいよね？これ以上危ない目に遭いたくないし、警察なら一般市民の私だって守ってくれる筈だもの。

「悪いのは追いかけてきた男たちだし」

　ふらつきながら立ち上がり、スカートについた埃を払って、交番がないか探してみよう。

　確か交番って会社からの最寄り駅の方にあったような……、途中、背後から車が迫ってくる音がして、もしかしてさっきの男たちが追ってきた？

　バッと振り向いて、車は私の横を通過して、暗闇の中に消えていく。

「違うか…」

　向かいから人がきても目を合わさないように歩き、そして暗い道が続く中、交番の看板に灯りが付いているのが見えた。