~SPの彼に守られて~
「ちょっと待って下さい、先に寝ますから!!」
「へいへい」

 慌ててベッドに入ってシーツをかぶると、鷹野さんが笑いながら私の傍に腰を下ろしたのが分かる。

「今日はいきなり知らない奴らに追いかけられたりして、大変だったな」
「はい」

 鷹野さんの言うとおり、今日一日で平凡だった生活がいっぺんに変わって、思考がぐちゃぐちゃのままで、明日もどうなるか分からないままでいるし、いつになったら元に戻れるんだろう。

「お前に怪我が無くて良かった」
「………」

 普段は口悪いのに、こんな時に優しく言わないでよ―…、あ~やばい、これ瞬きしたら涙がこぼれるパターンで、それを鷹野さんに悟られたくないし、口を真一文字にして黙って頷くけど―…。

「ふっ…、うぅ…」

 もー駄目……、一回瞬きをしただけで涙が頬を伝って、こんな不細工な顔を見せられないからシーツで顔を深く包むと、シーツ越しに頭を撫でられた。

「泣いていい。俺がいるから、寝るまで傍にいるから、安心しろ」
「………はい」

 鼻をすすりながら返事をするのが精一杯で、鷹野さんの優しさが張り詰めたものを溶かしてくれる。

 やがてシーツ越しに何度か撫でていた手が離れたから、そーっとベットのシーツから顔を出すと、鷹野さんはベットから降りて、背をベットに預けるように座った。

「何か話すか?」
「えっと…、鷹野さんはどうしてSPになったんですか?」

 護ってくれる人のことを少し知っておきたい好奇心があって、どんな理由でSPになったのか気になった。

「敵をとるためだ」
「敵?」
「ああ。詳しくは話せないが、その為にはSPの方が都合がいいんだ」

 敵をとるって、何だか怖…、どうしよう、話を最後まで聞きたいのに、意識が―…。

「そう……な…すね…」
「…………お休み」

 おでこに何かが触れた。
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