~SPの彼に守られて~
「ん~」

 目蓋を開けて疲れが残っている身体を起こして辺りを見渡すと、昨日傍でいた筈の鷹野さんの姿がなくて、下のお店にいるのかな?

 ベッドから降りて、バックの中にしまったスマホを取り出して時間をみると朝の5時で、睡眠時間は数時間くらいしか取れてないから、思考がぼうっとしている。

 寝間着のままだし、取りあえず服に着替えてからお店の方に行ってみようっと。

「あっ、服が…」

 今ここにある服は昨日着たもので、ヒールなら誤魔化しが出来るけど、2日連続同じ服は誤魔化せないから、鷹野さんに服を取りに帰れるか相談してみようかな?この部屋で何日過ごすか分からないし、化粧品や衣類も取りに行かなきゃヤバい。

 本当はしたくないけれど、昨日と同じ服に着替えて1階のお店に向かうと、鷹野さんのお父さんが次々とカウンターに料理が入ったお皿を並べていた。

 普段の朝ごはんはパンを一枚焼いて食べるだけだったりするので、目の前にある出来立ての料理をみて唾をゴクリと飲む。

「おはようございます」
「おう、良く寝れたかい?」
「はい。あ、あの、鷹野さんは今は何処にいるんですか?」
「ああ、玲二はこの時間は外で走ってるな。じきに戻るから、お嬢ちゃんは朝ごはんを食べな」
「わかりました。いただきます」

 席について手を合わしてから箸を持ち、真っ黄色の玉子焼きを口に運び、何度も咬むと甘い味が口の中に広がって、こんなにも美味しい玉子焼きは初めてで、お味噌汁の味は濃い目だけど油揚げと海草が入っていて、飲むたびに体がぽかぽかと温まっていき、あっという間に朝ごはんを完食してしまった。

「沢山食べてくれて作りがいがあるよ」

 鷹野さんのお父さんは、朝ごはんを夢中になって食べた私を目を細めながら見つめている。
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