~SPの彼に守られて~
「ご馳走さまでした。とても美味しくて、あっという間に食べちゃいました」
「お粗末さまでした」

 鷹野さんのお父さんはカウンター内のシンクで洗い物を始めたので、頂いてばかりは悪いし、お手伝いをしなくちゃ。

「お手伝いをさせて下さい」
「じゃあ、こっちで拭くのをお願いしようかな」
「はい」

 鷹野さんのお父さんの隣に立ち、洗われた食器を布巾で拭いていると、朱色のジャージを着た鷹野さんがお店の中に入ってきた。

 昨日はビシッとスーツを着ていてSPらしいなぁと思ったけど、今のジャージ姿からは実はSPとは見えないから、服装のギャップって凄い。

「親父、朝ごはん」
「しっかり食べておけよ」

 鷹野さんがカウンター席に座ると、鷹野さんの前にはお握りが3つ乗ったお皿と漬物が入った小鉢とお味噌汁のお椀が置かれ、朝ごはんにしてはかなり量が少ないと思うけど、当の鷹野さんは黙々とお握りを頬張って、お味噌汁を飲んで、漬物も平らげた。

「ご馳走さま。おい、服に着替えて会社に行くぞ」
「あ、はい」

 鷹野さんと一緒にお店の中から部屋に移動して、ふと着替えのことを思い出す。

「あの、今から自分の部屋に帰れますか?下着とか、必要な物を取りに行きたいんです」
「一旦、鷲宮さんに確認してみる」
「ありがとうございます!」

 訴えるように鷹野さんを見上げると、鷹野さんはふぅっとため息を吐いてジャージのポケットからスマホを取り出し、画面を操作して耳にあてる。
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