~SPの彼に守られて~
 普通乗用車に乗ると、鷹野さんはいつものようにマイクで白鳥さんや鷲宮さんたちに移動する連絡をした。

「よし、このまま店に戻って、飯を食うぞ」
「はい」

 鷹野さんはハンドルを握ってアクセルを踏むと、普通乗用車はお店へ向けて走り出す。

 ビル群が建ち並ぶ景色から段々住宅街へと切り替わって行き、もうすぐ鷹野さんのお父さんが営むお店に着くころかな?

「………くそ!尾行されてるな」
「嘘?!」

 隣でハンドルを握る鷹野さんの表情がとても険しくて、視線は何度もバックミラーとサイドミラーを見ているんだけど、尾行されているってもしかして昨日の覆面マスクの男たち?

 鷹野さんはハンドルを握っていた左手を離して、マイクを持つ。

「千明、振り返るな。スワン、シャーク、"プランB"に変更するぞ。何分で来れるか?」
『10分で行けます』
「シャーク、安全な合流地点を探せ』
『ほいほーい。3つ目の信号を左折して、コーヒーショップが見えたら右に曲がると銀行があるから、そこの裏に回り込めば確実に"プランB"の実行ができるよ』

 本当に覆面マスクの男たちなのかと思って振り返りたかったのに制され、さっきから"プランB"って言っているけれど、一体何をする気?

「分かった。千明、舌を噛むんじゃねぇぞ?」
「舌ってな―…、うわっ!」

 急にスピードがグンと上がり、思わず身体が前のめりになる。

 車が曲がるたびに遠心力で身体が飛んでしまいそうで、シートベルトをギュッと握りしめ、瞼をぎゅっと瞑る。

 どうしよう、すごく恐い……、私たち一体どうなっちゃうの?
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