~SPの彼に守られて~
 鷹野さんが運転するオートバイが、さっきの猛スピードから徐々に速度が落ちてきたような気がする。

 そしてオートバイが株式会社ホークスが入居しているビルの駐車場の奥の位置に停まり、エンジンが切られ、オートバイから降りた。

 お互いフルフェイスのマスクを脱いで、思いっきり空気を吸って新鮮な空気を体中に送り込む。

 何とか鷲宮さんたちがいるビルに辿り着いたけれど……

「ふっ、うぅ…」
「泣いていい」

 鷹野さんの大きな手が私の頭に置かれ、もう我慢の限界。

 フルフェイスのメットが足元に落ちた音が2つして、転がる音が駐車場に響き渡った。

「う、うぁぁ!」

 鷹野さんに抱きついて、溜まりにたまっていたものを全て出すように声を出しながら涙を流す。

 もう嫌だ!!何でこんなに怖い思いをしなくちゃいけないの?昨日も今日も明日も…、ずっとずっと追いかけられ続けるの?

 瞳から溢れる涙が鷹野さんのスーツを広範囲に濡らし、鷹野さんは私の背中に腕をまわして優しく背中を叩いた。

「………」

 鷹野さんは何も言わずにずっと背中を叩いたり、さすっている。

 オートバイで乗っているときも、昨日の夜にベットで涙を流していた時にも鷹野さんは普段の態度とは真逆で優しくて……、どうしよう、『俺に惚れるな』って言われたのに、こんなに優しくされちゃったらその言葉に反発したくなるよ。

 芽生えた気持ちを鷹野さんに伝えてしまったら契約違反になっちゃうし、鷹野さんに護ってもらえなくなってしまうから、この気持ちは伝えちゃ駄目…、駄目だよ。
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