~SPの彼に守られて~
 今にも伝えたい気持ちに蓋をして、鼻を何度もすすって顔を上げる。

「すげー不細工な顔だな」
「はい?」

 鷹野さんは淡々と言うけど、今、不細工って言った?人があれこれ悩んで泣いてたのに、不細工だなんて失礼な!優しいだなんて思ったのが、間違いだったかも。

「どうせ不細工ですし、膨れてますよ!!」
「そんだけ言い返すくらいなら、大丈夫だな。鷲宮さんの所に行くぞ」
「待ってください」

 私の背中を抱きしめていた腕が離れ、鷹野さんはフルフェイスのメットを2つ拾い上げてオートバイのハンドルに掛けた。

 先を歩く鷹野さんに駆け寄り、エレベーターで4階まで上がる。

 そして鷹野さんが先に株式会社ホークスのドアをノックすると、ドア越しからバタバタと走る音が聞こえ、ドアが開いて鮫島さんが出迎えてくれた。

「千明ちゃん!大丈夫だった?中に入って」
「はい」

 中に入ってソファに座ると、安心しきったのかまた涙が出てきちゃった。

「ごめんなさい、何だか安心しちゃって」
「ううん。泣きたいなら、俺の胸にドーンとあずけちゃっていいんだよ」

 鮫島さんはほらという感じで両腕を広げるんだけど、それはちょっと……。

「お前は尾行していた車について調べんか!」
「痛っ!!」

 前にも鮫島さんは鷲宮さんに鉄拳を落とされていたような…、確かここに来て鷹野さんと一緒に部屋を出るときにも落とされていたっけ?

 何だかこの光景がホッとするなぁ…、ここにいると追いかけられたことが忘れられるというか、SPの皆さんの空気がそうさせてくれているのかも。
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