~SPの彼に守られて~
 株式会社ホークスのドアが開かれて、鷲宮さんと鷹野さん、そして尾行をしてきた車を遠ざけようと普通乗用車に乗り込んだ白鳥さんの姿もある。

「鷲宮さん、千明ちゃん達を尾行していた車の番号を調べたら盗難届を出されていたみたいで、乗っていた人物の特定は難しいかも」
「そうか。スワンは車内から相手の顔は見えたか?」
「フロントガラスも黒かったので、相手の背格好まで見ることは出来ませんでした」

 一体どんな人が私を追っているの?分かりそうで、分からないこのもどかしさが部屋中に漂う。

「そうか。今は吉野様に怪我は無かったのが一番だ。ホークス、スワン、良くやった。引き続き、吉野様の警護を頼むぞ」
「でわ、私は先に"先着"してきます」

 白鳥さんは先に部屋を出て行き、私も鷹野さんとお店に戻ろうと椅子から立ち上がると、ふらっと身体が傾き、鷹野さんに支えられた。

「おい、大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」

 あー、びっくりした。立ちくらみ?めまい?まだ身体が疲れているのかな?

「まだここで休むか?」
「大丈夫です。ベットで横になった方が休めそうです」
「分かった。鷲宮さん、これから俺の家に戻ります」
「頼んだぞ」

 私たちは株式会社ホークスを後にして、普通乗用車で鷹野さんのお店に帰宅すると、鷹野さんはトランクから私の旅行カバンを取り出して部屋に運んでくれて、やっとほっと出来る。

「やっと帰れましたね」
「何とかな。俺は向こうで着替えてくるから、荷物は適当な場所に置いてもいいからな」
「はい」

 鷹野さんは部屋を出て行き、先ずは荷ほどきかな?

 旅行カバンから着替えや下着を取り出したけど、下着類は他の人に目が触れるのは避けたいから旅行カバンの底にしまっておいて、通勤に着る服は皺にならないように丸めておいて、ルームウェアに着替えちゃおうかな。

「あれ?ボタンが…」

 ルームウェアの上着のボタンを留めようとするけれど、うまく力が入らなくて、手が思いっきり震えている。

 どうして?さっきまで洋服や旅行カバンだって持てていたのに、何で震えが止まらないの?
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