~SPの彼に守られて~
「盗み聞きとは、好ましくないですね」

 背後から声をかけられたので振り返ると、白鳥さんが立っていた。

「ごめんなさい。そんなつもりじゃないんです。えっと、喉が渇いたからお水を飲みたくて、お店に入ろうとしたら声が聞こえてしまったんです」

 ルームウェアの袖口で鼻をこすり、白鳥さんにそう説明した。

「…………飲み物は私が買ってきますので、貴女は部屋で待っていてください」

 白鳥さんは少しだけ私の顔をじぃっと観てから外へ出て行ってしまい、私は言われたとおりに2階の部屋に戻って白鳥さんを待つことにした。

 さっきの白鳥さんの言い方はちょっと棘があるように聞こえたけど、好きであそこで盗み聞きをしていたわけじゃないのになぁ。

 暫らくするとドアをノックする音がしたので、ベットから降りてドアを開けると、白いビニール袋を手に持った白鳥さんが立っていた。

「飲み物の味を聞くのを忘れてしまったので、勝手に選んだものですが」
「いいえ、私も何が飲みたいかを伝えていなかったのですいません。買っていただいて、ありがとうございます。代金をお支払いしますね」

 部屋の隅に置いてあるバックから、お財布を取りだした。

「代金はいりません」
「もともと私が飲みたいって言ったので、ここはお支払いをさせてください。代金はいくらですか?」
「………150円です」
「分かりました。どうぞ」
「でわ、私はこれで。ゆっくりと休んでください」

 小銭を取り出して代金を白鳥さんに渡すと、白鳥さんから白いビニール袋を受け取り、小銭を受け取った白鳥さんは廊下を歩いて階段を降りて行った。

 喉が渇いていたし、少しは寝れるかな?白いビニール袋の中身を見たら、清涼飲料水のペットボトル1本とプリン1つが入っていた。

「………150円だけじゃ足りないじゃん」

 飲み物だけで良かったのにプリンまで買っていたなんて……、白鳥さんの心遣いが嬉しくて、さっきは棘のある言い方だなって思っていたけれど、それは取り消そう。

 久しぶりに食べたプリンの甘さは、体の疲れよりも心を癒やしてくれた。
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