~SPの彼に守られて~
 薄暗い部屋に閉じ込められてから、どれくらいの時間が過ぎたのかな?窓の外を見ると、まだ陽は夕焼け色ではないからお昼?それとも午後3時とか?

 私が会議に出ていないことに誰かが気づいてくれればいいけれど、あの龍崎さんの態度をみる限り、私がいないことをごまかしていそう。

 無残な形になってしまったスマホを拾って、悪あがきだけど電源が入らないかひび割れている液晶画面をタップするも、うんともすんともしない。

 このまま連絡が取れないと、龍崎さんに"あの人"のところに連れていかれちゃう。

「ふっ…、うぅ…」

 連れて行かれる恐怖よりも、今まで私を護ってくれていた鷹野さんたちの努力が水の泡になっちゃうし、鷹野さんに会えなくなってしまう寂しさの方が勝っている。

 頬を伝う滴が2、3粒ほどスマホに落ち、ひび割れている液晶画面には涙でメイクが崩れて不細工な顔をしている私が映っていた。

 そんな顔をしていると、また鷹野さんに不細工だなって言われちゃうじゃん。

 でもそう言われてもいいから、ちゃんと好きって伝えたかったなぁ。

「何だ?!お前は―…、ぐぁっ!!」

 ドア越しに覆面マスクの男の呻き声とドサっと倒れる音がして、一体そこで何が起きてるの?

「千明!!無事か?そこにいるんだろ?!」

 ああ…、こういうときって神様に感謝をする人の気持ちが分かるなぁ。

 鍵がかかっているドアの向こうから想いを伝えたい人の声が聞こえて、袖口で目元を拭い、駆け足でドアに向かう。

「ここにいます!」
「くそっ!!(ドアが)開かねぇな…、体当たりをするから(ドアから)離れていろ」
「はい」

 ドアから離れると、鷹野さんがドアを開けようと体をドアに何度もぶつけ、その振動でドアが軋んでいくのが分かる。

 そして一番強く体をドアにぶつけたと同時にドアが開き、覆面マスクの男は倒れていて、すぐ傍には額に汗を大量に掻いて息を整える鷹野さんの姿があって、すぐ駆け寄った。
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