~SPの彼に守られて~
「鷹野さん!!」
「怪我はしていないか?」
「していないですよ。それより、どうしてここ(薄暗い部屋)の場所が分かったんですか?」

 龍崎さんはここは地図にも載っていない場所とか言っていなかったし、私のスマホだって無残な形になっちゃっているから連絡すら出来なかったのに。

「ああ、それはこれをお前につけていた」

 鷹野さんが私の通勤服の後ろ襟元に手をまわすと何か剥がれる音がして、手に持っているものを私に見せると、それはボタン型の形をしていて、赤く点滅をしている。

「行きの車の中で、お前の髪をくしゃくしゃにしているときに発信器を付けた。まさかすぐに出番が来るとは思わなかったけど、付けておいて正解だったな」

 鷹野さんは発信器をスーツのポケットにしまい、左耳にかけているインカムに左手を添える。

「スワン、千明と合流が出来た。今からここを脱出するから、誘導を頼む。千明、行くぞ」
「はい!」
「待て、ここらか逃がすか!」

 この薄暗い部屋から出ようと一歩踏み出すと、倒れいた覆面マスクの男が立ちあがり、手には銀色に輝く鋭利な物が握られていた。

「……」
「……」

 鷹野さんは警護に使う銀色の棒を手にし、覆面マスクが鋭利な物で間合いを取り始めて、どれくらい経ったのだろうか。

 覆面マスクの男が距離を縮めようと片足を出そうとすると、鷹野さんはその行動を読んでいるのか左右に動いて距離を縮めないようにする。

 最初の一歩はどちらかになるか、私は成り行きを見守ることしかできないのが歯がゆいよ。

「お前たちをここから逃がすわけにはいかねぇ!!」

 先に踏み出したのは覆面マスクの男で、鋭利な物で鷹野さんを傷つけようと振りまわし、鷹野さんは迫ってくる鋭利な物を左に右にと避けながら反撃のチャンスを窺っていると、覆面マスクの男が鷹野さんの顔にめがけて鋭利な物を突き出した!
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