～SPの彼に守られて～
「はっ！」
「そんな拳じゃ当たらないさ」

　先に動いたのは鷹野さんで、一歩前に出たと同時に右手の拳を龍崎さんの顔にめがけて突き出したら、龍崎さんは鷹野さんの拳や足技をなんなく避けているのを見て、私は龍崎さんが格闘技をやるような人だとは想像をしていなかったから、目の前の光景をもし経理課の人たちに話をしたら信じてもらえるかな？

　でも信じてもらえないだろうな、角井百貨店では誰もが龍崎さんのことを憧れて慕っている人が多いもの。

「これはどうだ！」
「っつ！」

　龍崎さんが鷹野さんの顔をめがけて右足を高く蹴りあげたら、鷹野さんは左腕と左足の外側を使って防御をしたんだけど、鷹野さんは顔をしかめる。

　そうだ、鷹野さんの左腕は赤い液体が流れるほどの怪我を負っていて、龍崎さんの足がその部分に当たったんだ。

　鷹野さんは一瞬ふらつくも踏ん張って再度龍崎さんに挑み、それぞれお互いの顔に拳が当たると赤く腫れたり、少しだけ赤い滴が流れているけれど、２人とも手と足を休まずに出し合い、地下駐車場には２人のぶつかり合う音だけが響き続けいている。

　そして龍崎さんは鷹野さんの足技を避けると、少しだけ後退して距離を開けた。

「無力なＳＰかと思っていたけど、なかなかやるね。推薦するから、うちの組織に入らないかい？」
「お前たちみたいな組織に入るかよ！！」

　龍崎さんの言葉に鷹野さんはカァっとなったのか、言葉に怒気が含まれているのが分かって、場の雰囲気がピリッと張り詰めた。

　私から見れば龍崎さんはただ挑発しただけに見えたけれど、言われた鷹野さんは小さい子供が反抗するときのような態度に見える。

　鷹野さんにとって、龍崎さんとレオがいる組織は一体どんな関係なの？！

「そろそろ終わりにしないとね。"あの人"は時間に煩いんだ」
「こっちの台詞だ！」

　２人は同時に右拳を突き出し、私は祈るように手を組んで瞼をギュッと瞑ったら、鈍い音が１つだけ地下駐車場にこだました。
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