~SPの彼に守られて~
「お待たせしました」
「白鳥さん!あっ、あの…、鷹野さんの腕が、腕から…」

 私たちの所に白鳥さんが来たんだけれど、この状況を説明したいのに、口が上手く回らない。

「車をここに連れてくるので、このままお待ちください」
「は、はい」

 白鳥さんは地下駐車場の出口へと向かって走り去り、私は車がここにくるまで鷹野さんの腕を抑え続ける。

「はぁ…はぁ…」
「鷹野さん、もう少しで車が来ますから」

 鷹野さんは呼吸が荒くて顔面蒼白だし、車はまだなの?早く!早く来て!お願い…、鷹野さんが……。

「泣く…な…」
「だ…って…」

 鷹野さんは額に汗を流しながら苦笑していて、私のためにこんなにも傷ついているのに、涙を流すのは当たり前だよ。

 両手で怪我をしているところを抑えているから頬を伝う涙を拭けなくて、鼻を何度もすすっていると、鷹野さんは真っ赤に染まっている右手を怪我をしているところから離して、私の左頬に手を添える。

 ぬるっと赤い液体特有のの感触がしたけれど、そんなものは気にならない。

「涙でメイクが崩れていて、不細工でしょ?」

 いつもメイクが崩れていると不細工だの言ってくるから、嫌味っぽく言っちゃった。

「そんなこ…と、思ってもね…ぇよ」
「冗談ば―…」

 "かり"という言葉は、鷹野さんの唇で塞がれた。

 突然のことで何度も瞬きをするけれど、巨大観覧車のカゴの中でオデコにキスをされた時よりも鷹野さんの唇の感触がよりダイレクトに感じた。

 すっと唇が離れて、鷹野さんは私の頬を両手で包む。

「……」
「……」

 お互い何も言わず見つめ合い、鷹野さんの顔がまた近づいてきて、今度は瞼を閉じて唇を受け入れた。

 私たちは依頼主とSPという立場だけれど、気持ちをぶつけるかのように触れ合う唇の深さは増すばかりで、絡め合う熱で意識が遠のきそうになるのを鷹野さんのスーツを掴んで保ちながら、心の中で何度も鷹野さんと名前を名前を呼んだ。
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