~SPの彼に守られて~
 名残惜しそうに唇が離れると、急に白い光が私たちを照らした。

 鷹野さんは私の頬を包んでいた両手を離すと、右手で自分の顔の近くに持ってきて白い光を遮光し、片目をつぶりながらその方向を見つめる。

 私も手をかざして白い光の方を見ると車のシルエットが見えたから、もしかしてと思って鷹野さんの方に顔を向ける。

「絶対(キスをしているところを)見ていたな」
「……ですね。立てますか?」
「何とか」

 鷹野さんはふらつきながらも立ち上がり、私も一緒に立った。

 白い光が消えるとそこには私の送迎で使っている普通乗用車があって、ドアが開かれると鷲宮さんと白鳥さんが降りてきたから、絶対にキスをしているところを見られちゃってるよね?

 鷲宮さんがつかつかとこちらに歩いてきて、鷹野さんと向き合う。

「色々と言いたいところだが、先ずは吉野様をよく護った。今から病院へ行って来い」
「……はい」
「吉野様は我々と一緒に弊社に戻りましょう」
「待って下さい。私も鷹野さんと一緒に病院へ行きます!」
「お疲れだと思いますので、どうか我々と来てください」

 鷲宮さんは頑として一緒に来てほしいと言うけれど、鷹野さんは私の―…

「鷹野さんは私のSPなので、離れたくないです。一緒に行かせてください、お願いします」

 依頼主がこんなことを言うのは違うかもしれないけれど、鷹野さんのスーツの袖ををギュッと握りながら、鷲宮さんに自分の意思を伝えた。
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