~SPの彼に守られて~
「依頼主がこう言っているので、異論は無いですよね?」
「………白鳥、2人を近くの警察病院まで連れていくぞ」
「かしこまりました」

 鷹野さんがにやりと笑っていて、鷲宮さんはやれやれという顔で言い、鷹野さんは私の手を握ると歩き出して普通乗用車の後部座席に乗り込んだ。

 私が奥の席に座って鷹野さんが隣に座り、白鳥さんが運転席、鷲宮さんが助手席に座るとエンジンがかかって普通乗用車は走り出して、地上に出ると外は既に夜になっている。

 薄暗い部屋に閉じ込められていた時は窓から差し込む光でまだお昼くらいかと思っていたのに、かなりの時間が経過していたんだ。

 白鳥さんの運転で警察病院へ向かう車中は誰も口を開かず、普通乗用車の走行音だけがしている。

 鷹野さんは後部座席のシートに体を深く沈ませて外の景色を眺めているんだけど、私の左手を右手で強く握っていて、私もそれに応えるように握り返した。

 そして警察病院の看板が見えて、普通乗用車は敷地内に入ると夜間救急受付のドアの前で停車する。

「俺が受付で事情を話してくるから、お前たちはここで待っていろ」

 鷲宮さんが助手席から降りて、夜間救急受付のドアを開けて中に入っていった。

 良かった、これで鷹野さんが治療を受けてもらえる。

「やべぇ…な…」
「鷹野さん?!」

 手を強く握られていた感触がしなくなり、鷹野さんはぐったりとしていた。

 嘘でしょ?!病院に着いたばかりなのに、これで治療が受けられると思っていたのに!!

「鷹野さん!鷹野さん!!」
「……」

 鷹野さんの体を揺さぶりながら何度も呼ぶけれど、鷹野さんは返事をしない。

「い…、い…、嫌ぁぁぁ!」

 車内には私の叫び声が響いた。
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