~SPの彼に守られて~
 そして、一週間後。

「お疲れ様でした!お先に失礼します」

 定時になると荷物をまとめて経理課の人たち挨拶をして退室し、エレベーターに乗ってぼぅっと階数パネルを見ていると、私の前に立つ女性社員2人が話し始めた。

「龍崎さんが左遷されて、とてもショックです」
「行き成りだったよね。まだ一緒に食事をしたことが無かったから、もっと早く誘えば良かったなぁ」
「私もです!同じ部署の女性スタッフ全員が嘆いていましたよ。せめて連絡先を交換していれば、食事に誘えていましたよね」

 ついこの間の地下駐車場での出来事は、角井百貨店の社員には伝わっていないんだなぁ。

 龍崎さんが警察に連れて行かれた翌日に経理課に出勤すると、部長から龍崎さんは仕事で重大なミスを犯したということで遠方にある地域の支店へ左遷されたと言われた。

 私が目の前にいる女性2人に、『実は龍崎さんは格闘技の腕前が凄くて強いけれど、ある組織に属していて私をレオの所に連れて行こうとしていたんですよ』って話したらどんな反応をするんだろうなと考えるけど、100パーセント信じないに軍配があがりそうだよね。

 そうこうしているうちにエレベーターは1階に停まり、社員通用口に向かうと鷹野さんが立っていた。

 怪我によって退院が長くなるかと思ったけれど、医師や看護師が驚くくらいの驚異的な回復で、1週間で退院となったんだよね。

「お待たせしました」
「待っていないから大丈夫だ」

 いつものように鷹野さんの警護が始まり、普通乗用車に向けて歩きはじめると、一歩前を歩く鷹野さんがインカムに手を添えながら振り向いた。
< 75 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop