画家の瞳は何をみる?
プロローグ
燃え盛る炎は、家全体を化け物のようにのみ込んでいく。
『ダメだって!!行けば、美咲が……』
『大丈夫。私は死なないから』
少女はそう笑顔で言うと、親友の腕を振りほどき、炎の中に飛び込んで行ってしまう。
『ダメだよ……。ダメ!美咲!!』
『君!危ないから下がってなさい』
『そんなっ……!中に美咲が……っ!』
消防隊員の力は強く、女の力ではどうにも振りきれない。
親友はその場に崩れ落ちた。
アスファルトに怒りをぶつけるように、拳を叩きつける。
『なんでよ、どうしてっ……』
泣き声をあげる彼女の声は、到着する消防車のサイレンにかき消された。
……4月13日の金曜日の夜――。