ふりむいてよキャプテン
「いつき先輩、氷どうぞ」



タオルをまいたビニール袋に入れた氷を、ボール拾いをしていたいつき先輩に差し出す。

あとこれもどうぞ、とティッシュを渡すと、豪快にそれを鼻に突っ込んでから、ありがとうと目尻を下げる。



「ボール当たったんですか?
大丈夫でしたか?」

「ああ、でも、途中でやめられないでしょ」



痛くなかったんですか、とか色々言っている私の心配をなんでもないことのように、いつき先輩はたった一言で片付けた。

いつものニコニコ笑顔で。


でもこれ、軟球じゃなくて硬球だよ。
私も何度かボールに当たったことあるけど、その場にうずくまっちゃうくらい痛いのに。



「そっちじゃねぇって言ってんだろ西川!」

「はい!すみません!次おねがいします!」



高田先生の怒鳴り声をBGMに、私といつき先輩でフェンス付近に散らばったボールを集める。

他の人はもう百本ノックが終わって、外周にいっている。


みんな、がんばるよね......。
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