ふりむいてよキャプテン
結局小野くん、今日はノーヒットだったけど......。


グラウンドでダウンをしている赤と白のしましまユニフォームの集団の中から、小野くんをちらりと見てから。

球場のほうきを借りて、自分たちが使ったベンチの砂ぼこりを端からグラウンドの方へと掃いていく。


明日は、打てるといいな。

......て、別に小野くんを個人的にひいきしてるとかじゃなくて、チームに勝ってほしいからそう思うだけで......っ!


誰にも聞かれていないというのに、心の中に浮かんできた考えにひとり言い訳しながら、ほうきを少し強めにはく。



......でも。やっぱり本当は少しだけ、ひいきしてるかな。ちょっとだけ、本当にちょっとだけだよ。

小野くんって、なんか応援したくなっちゃうんだよね。


......す、好きとかじゃないけど!
そんなはずは絶対ないっ!

だって、だって、小野くんって......

三回もエラーするし、泣くし、大事な場面で打てないし。
おまけにキャッチャーフライがとれなくて、三日でキャッチャーやめるし。

キュンポイント全然ないもん。


またひとり言い訳しながら掃除をしていると、バシッバシッとどんどんほうきをはく強さが強くなっていく。
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