ふりむいてよキャプテン
にっしーが眉を下げて悲しそうな顔をしたのを見て、さすがに良心が傷んだ私は、あわててさっきのフォローを入れる。


「ご、ごめん。今のは言い過ぎた。
あの、......エアコンの温度下げていいよ」


「いや、いいよ。
あみは悪くない。

あみの言う通りだよ。
あんなところで倒れるなんて......」



にっしー落ち込んじゃった......。

勉強大嫌いなにっしーが教科書を開き、私と目を合わせず、ペンを動かして綺麗な字をひたすら書いている。


始業式の真っ最中に、全校生徒の前で倒れたヒロくんよりもインパクトがなかったとはいえ、やっぱり倒れたこと気にしてたのかな......。



「ごめんってば......、にっしー......」

「......勉強しよう」



そうして私たちは。
お母さんがいるとはいえ、彼氏の家で、部屋で二人きりにもかかわらず。

一言もしゃべらずに黙々と勉強したのだった。
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