ふりむいてよキャプテン
「ねぇねぇ、聞いてー。
昨日ね、キスしちゃった」

「えっ!!」


休み明けの月曜日、HRが始まる前の教室で、キスをしたと報告したのはもちろん私ではない。

私の親友でクラスメイトであり、ヒロくんの彼女でもあるゆっち。


私の席の隣に立ち、昨日二人で勉強したときにしちゃった、とこっそりとそんな報告をする。


「声が大きいってば。
そんなに驚くことじゃないでしょー?」

「そ、そうだよね。ごめん......」


そうだよね、付き合ってるわけだし、部屋に二人きりだったらキスくらいしても普通だよね。

昨日の自分たちとは違いすぎて、驚いちゃったけど......。


「そっちは?なんかあった?
二人で勉強したんでしょー?」

「.....なんもないよ。
昨日はまじめに勉強したかな......。
ほ、ほら、一応テスト前だし、勉強しとかないとね」


当然キスくらいしたよね?と期待に満ちた表情で聞いてくるゆっちに、苦笑いで返す。


「えー?つまんないなぁ」


と、不満そうなゆっち。
私だって勉強漬けの一日にしたかったわけでもないけどさ......。


かたや、キスまですませたヒロくん。
かたや、エアコンの温度すら制限されるにっしー。

同じ倒れたひとでも、ここでずいぶんとはっきり差がついてしまった。
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