ふりむいてよキャプテン
「しゃべらないと言えば、小野くんとまるちゃんもしゃべらないよね?席近いのに。

好きなんだよね?」


私の前の席が小野くん、で私の左ななめ前が小野くんの思い人のまるちゃん。

つまり、小野くんの横がまるちゃんで、小野くんの後ろに私という、複雑トライアングルが教室の片隅に出来上がってしまっている。


「らしいけどね。
緊張して話せないとか?」

「......ねぇ、あみは今でも小野くんのことやっぱり好きなの?」


私たちの六組の廊下には誰もいないけれど、それでも声をひそめたゆっちの問いにほんの数秒迷って。


「ゆっちだから正直に言うけど、好きじゃないって言えば嘘になるかな。でも、にっしーいるし、ね......」


迷ったとしても結局最初から出していたのと変わらない答えをゆっちに告げる。


「だよね、うん、そう言うと思ったよ。
でもね、はっきり言うけど小野くんはやめなよ」


私がそう答えることが分かっていたとでもいうかのように、ゆっちは軽くうなずく。
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