ふりむいてよキャプテン
にっしーは何やら楽しそうに誰かと話しながら、ジェスチャーで出口の方を指し、私の手をひき歩いていく。


今のペンギンで最後だったもんね。
結局全部見て回ったけど、楽しかったからあっという間だった。

魚を見るのはそんなに好きじゃないけど、でも楽しかったのはにっしーときたからかな。



「あ、ねぇ、帰る前に外の観覧車乗っていい?」



水族館の外に新しくできた大観覧車。

一度は乗ってみたかったし、もう少し帰りたくないような気もして、電話中のにっしーに小声で話しかけると、にっしーは笑顔でうなずいた。



「長々とはなしちゃってごめんね」



観覧車の列に並ぶと、ようやく電話を切ったにっしー。

外はいつのまにか日が沈みかけている。
今乗ったら夕日がキレイに見えるのかも、それでか並んでいる人も多い。



「別にいいよ。友達?」

「ああ、うん。マサだった。
ひまだったら今から遊ぼうって」

「そう......、なんだ」

「俺は今デート中だって言ったら、あみに謝っといてってあいつ言ってたよ」



笑顔でそう言うにっしーに、無理矢理笑顔を作る。

なんでよりによって、私といるときに電話かけてくるかな。せっかく楽しかったのに、また複雑なモヤモヤが胸の中に広がっていく。






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