ふりむいてよキャプテン
それなのに、そのたった一言だけがなかなか言い出せずにいた。


隣にいる小野くんに意識が集中して、心臓は爆発しそうになるし。

いざ二人きりになって話を切りだそうと思うと、緊張して話しかけることすらできないんだ。

......どれだけヘタレなんだ私。


数日間何度も何度も二人きりになるチャンスはあったのに、結局告白どころか話しかけることすらできなかった。


いやいやいや!こんなんじゃだめだ!
ちゃんと告白するって、ゆっちと誓ったじゃん!

よ、よし!今日こそ!
話しかけるっ!


左隣を見ると、小野くんは椅子に座って靴を履き替えている。


部活終わったあと、時間ある?
部活終わったあと、ちょっといい?
ちょっといいかな?


「あ、あの......っ!」

「なに?」


何度も頭の中でシミュレーションしてから、ようやく勇気をふりしぼり、隣にいる小野くんに声をかける。

いつもはふりむいてくれないのに、めずらしくふりむいてくれた顔があまりにもかっこよくて、私の心臓はまた止まりそうになる。

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