ふりむいてよキャプテン
「本田くん、先生がTバッティング終わったらきてって」


もうこれ以上ここにいたくない。
さも今きた風を装い、本田くんたちに近づく。

あくまで小野くんの方は一切見ず、不自然なまでに本田くんだけを見ながら。



「おう、わかった。さんきゅー」


笑顔で手を上げる本田くんに、私もにっこりと笑って、その場から立ち去った。





こんなの、作っても無駄だった。

私は誰もいない部室に戻るとすぐに、小野くんのバックからチョコを取りだし、ごみ袋の中に叩きつけた。


思いきり床にぶつけたので、可愛くラッピングしたガトーショコラは袋のなかでぐちゃぐちゃになっているに違いない。

私の恋心みたいに、もう修復もできないくらいにこっぱみじんに。


望みないって分かってた。
好きな人がいることも、今は彼女作る気がないことも、全部知ってた。

それでも、フラれてもいいから伝えたかった。


だけど......、私に興味ないどころか最初から女としてすら見られてないんじゃん。そう思うと全てがむなしかった。

彼女作る気がない小野くんも、クラスの女の子にチョコをもらったら悪い気はしないかもしれない。

でも、女としてすら見られてないマネージャーにこんなのもらっても、迷惑なだけだよ。

こんなの、ただのごみだ。


......掃除終わらせたら、このごみ袋ごと捨てよう。
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