ふりむいてよキャプテン
「うそだー、絶対にっしーのこと好きな女の子いるよー」


絶対、ひとつかふたつは本命チョコがあるよ。
仮に全部義理としても、実は言えないだけで、本命とかありそう。

だって、にっしーかっこいいし気さくで話しやすいし、モテない方がおかしいもん。


「いないいない!
いないからなっ!」


......と思うのに、なぜかムキになって否定してくるので、それ以上そこを突っ込むことはやめた。


「でも、にっしーのために作ったチョコじゃないの?
ちゃんと食べてあげないと。
たくさんあっても食べられないでしょ?」


義理か本命かはこのさい置いておくとしても、にっしーのために用意されたチョコ。ちゃんと食べてあげないと、女の子たちがかわいそうだ。

一生懸命作ったチョコを好きな人に渡せなかった自分に重ねて、女の子たちに感情移入してしまう。


それに、小野くんのために作ったチョコをにっしーに渡すのも失礼な気がするし......。

しかも一度ごみ袋に捨てられた、こっぱみじんになった恋心の残骸を。
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