ふりむいてよキャプテン
「昨日小野先輩と電話してて」


なんで一生懸命やる話から、小野くんの話になるんだろ。

やだな......、聞きたくない......。

一年くらい一緒に過ごしても小野くんと電話なんて一回もしたことないのに、入ってすぐに簡単に電話をしたというさほちゃんに。

無意識のうちに、ほうきをもつ手にぎゅっと力がはいる。


「それで、怒られたんです」

「え、なんで?」


純粋に怒られる意味が分からなくてそう問うと、さほちゃんは下げていた目線を上げて、まっすぐ私の顔を見た。


「なんでいつも先輩が掃除とか仕事してるのに手伝わないの?先輩ばっかり働かせて何とも思わないの、って」

「......小野くんが、そんなこと言ったの......?」

「......はい。
それに、昨日あみ先輩が帰った後も、西川先輩に怒ってたんですよ?あんな言い方したら、宮崎さんが気を悪くするのも当然だって」


うそ......。

さほちゃんからそれを聞いても、なんだか現実味がなくて本当のことだとは思えない。

わざわざ嘘をつく必要もないだろうから、きっと本当なんだろうけど、だけど。

あの小野くんがそんなこと言うなんて......。
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