ふりむいてよキャプテン
「もちろん。
マネージャーとしてもだけど、女同士仲良くやっていこうね」


しずかちゃんも辞めてマネージャー二人しかいないんだし、これからは女同士もっと色んな話ができるといいな。

それはたしかに本心なのだけど、だけどどうしてもまだ心にひっかかっていることがあった。


「だけど、ごめんね......、さほちゃん。
私、やっぱり小野くんとさほちゃんのこと、応援できない」

「え......?」


戸惑うさほちゃんに、私はただ震える手でほうきを握りしめる。


「言えなかったけど、私も......小野くんのことが、好きなの......。望みないって分かってるけど、それでも好き、なんだ......」


いくら他に好きな人がいて、今は誰とも付き合う気がないとはいえ、小野くんだって可愛い年下の女の子から好かれて悪い気はしないだろうに。

それなのに、さほちゃんとの関係が悪くなるかもしれないのに、注意してくれた。別に後輩マネージャーの指導は小野くんの仕事じゃないのに、小野くんにとって何の得もないのに。

私のことが好きだからいいところ見せたいとか、みんなの前でいいかっこしたいとか、そういうのでもない。言わなくてもいいことなのに、でも言ってくれたんだ。


私のこととか何にも興味ないのに、いつもそっけないのに、でもマネージャーとしてはいつもちゃんと見ててくれて。

誰からの評価も上がらなくても、それでも自分が正しいと思ったことをできちゃう人なんだ。


だから、そんな小野くんだから、好きなんだよ......。
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