ふりむいてよキャプテン
「あれ、この漫画さほちゃんも読むんだ?
私もにっしーに貸してもらって読んだよ」


机の上に昔読んだ野球漫画が数冊積み上げられているのを見つけ、お守り作りの手をとめ、それを指す。


「はい、私も西川先輩に貸してもらいました」


針はもったままに、西川先輩の部分を協調してにっこりするさほちゃん。


「ふ、ふーん、そうなんだ......。
面白いよね、野球の勉強にもなるし。さほちゃん最近スコアも書けるようになったし、がんばってるよね」


一生懸命やります、の言葉に嘘はなかったらしく、あれからさほちゃんは本当によくやってくれていた。

にっしーやいつき先輩同様に焼けにくい体質なのか白い肌はそのままだけど、ジャージが汚れるのも構わず、グラウンド中を走り回っている。


さほちゃんは、基本的にはいいこなんだ。
話せば分かってくれるし、意外と真面目なとこもある。

今日だって、てっきりにっしーの分は作りたいっていうかと思えば、学年別に作ることになってると言ったら、素直に従ってくれた。


にっしーのことでお互いに思うとこがあるとはいえ、私は決してこの子のことが嫌いではない。


「はいっ、ありがとうございます。
さほ、もっとがんばりますね」


さほちゃんとおしゃべりしながら、お守り作りに没頭し、夜は更けていった。

もちろんBGMはずっと、校歌のまま。

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