ふりむいてよキャプテン
「ナイラン!」


ベンチの前の方に立っていたみんなに声をかけられ、戻ってきたにっしーは軽くみんなの手をタッチしていった。

ベンチに入るにっしーと目が合った時、ニコっとされたので、私も笑顔を返す。


たった一点。

入部したての頃の私だったら、そう思ってたかな。
大量に点差ついてるのに、どうせ負けるのに、たった一点のために、なに必死になっちゃってるの、って。

でも、ね。
負けてるのには変わりないし、たった一点なのは変わりないけど、それでも貴重な一点。


かっこいいよ、にっしー。
どんな時もあきらめないにっしーは、かっこいい。





いつき先輩を二塁に残し、一点を入れられた相手チームのキャッチャーはピッチャーの元にボールを直接渡しにいっていた。

タイムはとらずに、一言だけ声をかけて、ピッチャーの肩を軽く叩き、キャッチャーはホームに戻っていく。


「ワンナウトー!」


ピッチャーが投球する前に、キャッチャーは指を一本立てて野手に声をかける。


点差十分あるから、二塁ランナーは気にしなくていい気楽にいこう、とでも声をかけたのかな。


うちからしたら焦ってもらった方が助かるけど、実際あせる場面でもないしね......。

今日のあのピッチャーからは、ヒットは何本か打ってるけど、長打は一本も出てないし。


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