ふりむいてよキャプテン
......え。

何を思ったのか、つかんだ手を握り返されたので固まっていると、小野くんは一瞬だけ私の方を見て、すぐにその手を離した。


「来年は負けないから。
先輩たちに恥ずかしくないチームを作っていく」


すれ違いざまにそれだけ言うと、返事も聞かずに行ってしまった。


なんなのもう......。


今日の対戦相手に負けないって意味なのか、
来年は四回戦突破を目指すって意味なのか、
それとももう負けないくらいの意気込みでいいチームを作っていくって意味なのか。


どんな意味で言ったのか分からないし、なんでそんなことをいきなり私に宣言してきたのか分からない。

相変わらずよく分からないんだから......。


本当に何考えてるのか分からないけど、でも。

やっぱり目で追っちゃうんだ。


「......うん。がんばろうね」


遠くなっていく背中に声をかけても振り向いてもくれない、明日からキャプテンになるその人を。

永遠に振り向いてくれる日なんてこないのは分かってるのに、それでも追っちゃうんだ......。
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