ふりむいてよキャプテン
保健室の中に入ると、ひとりきりでベッドに座っているにっしーと目が合い、気まずそうににっしーは目をふせる。


さっき保健室に入るときには、保険医外出中の札が掛かっていたし、放課後に保健室にくる人もそうそういないだろう。

ってことは、二人きりか......。
よけい気まずいけど、そうも言ってられない。


「......大丈夫?」

「うん、へーき」

「どこ当たったの?腕?
腫れてるだけ?とりあえず氷だけでいいかな......」


ひとまずは私情を捨てて、にっしーに近づいてから当たったところを見て、冷やす準備をする。


「同じ部活だし、全く関わらないのはやっぱ無理だね。
もう俺の顔も見たくないだろうけど......、俺野球辞められないから、ごめん」


冷凍庫から氷を出して、ビニール袋に入れていったん流水にさらしていると、後ろから沈んだ声が聞こえてきた。


「そんなの当たり前だよ。
にっしーが辞めたら、誰がセカンド守るの」


女とゴタゴタしたからって野球やめるにっしーとか嫌だし、そんなにっしーは見たくない。

背は向けたまま、流しっぱなしの水に負けないように少し大きな声を出した。
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