ふりむいてよキャプテン
「なにそれ、妬み?
俺には、ピッチャーやってない時どうでもいいと思ってるのは本田の方に見えるけど。自分がピッチャーやりたいからって、ねたまないでくれる?」

「本当にお前ってムカつくよな。
なんでそんな言い方ばっかりしてくんだよっ!」


今は誰も座ってない一年生のパイプ椅子を、本田くんは座ったまま、ヒロくんの方に向けて思いきり蹴飛ばした。


「......ほとんど予備ないんだから、大事にした方がいいんじゃない。この椅子壊れたら、本田が使ってよ」


大事にしろと言いながらも、椅子を蹴飛ばされてムッときたのか、ヒロくんは足元の椅子を拾って、本田くんの足元めがけて投げ返す。


ピッチャーってプライドが高い人が多いうえに、お互いピッチャーということもあって、プライドとプライドのぶつかり合い。


大会前でピリピリしているのに加えて、先ほどの険悪な雰囲気。普段は抑えているものが一気に爆発したのか、お互いに一歩も引かない二人。

もちろん本気でお互いに椅子をぶつける気はないと思うけど、こんなことしてたら危ないのに、誰もとめようとはしない。


私の隣に座っている小野くんは、とめるどころか、うつむいたまま無言で拳を握っているし。

ちょっと......、しっかりしてよキャプテン......っ。
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