ふりむいてよキャプテン
「あの!ヒロくんも本田くんも、それぞれ思うとこあるかもしれないけど、大会前の大事な時期にケンカは良くないと思うなー、なんて。
ほら、二人ともレギュラーなんだし、ね?
ここは大人になって......。言いたいことあるなら、大会終わった後に話し合ったらどうかな?と思うんだけど......」


誰も止めないから、勇気を出して止めてみたのに誰も聞いてない。どうするのこれ。


「宮崎さん。悪いけど、にっしーのとこいってやって。
ここは俺がなんとかしとくから」


とうとう椅子の投げ合いまで始まった険悪な雰囲気の部室に、私の隣で小野くんは深くためいきをついてから、うつむいたままそう言った。

なんとかって、なんとかできるのか。
小野くん自身もカッとなりそうで心配だし、それに......。


「でも......」

「......おねがい」

「......分かった。ここよろしくね」


にっしーとは関わらないって言ったし、と心の中で渋っていたけれど、せっぱつまったような切実な声でキャプテンから頼まれてしまっては断れない。


ううん、それは口実で、本当は最初からにっしーのとこにすぐにでも飛んでいきたくてたまらなかった。

部室も心配だけど、今はにっしーの方が心配。


すばやくビニールの傘をつかむと、雨の中に飛び出した。
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