ふりむいてよキャプテン
どこにいったのか探し回らなくても、にっしーはわりとすぐに見つかった。


さっき背番号を配った武道場の裏で、雨の中突っ立っていたから。傘もささずにいるから、練習用ユニフォームがびしょ濡れになってしまっている。


「にっしー......。こんなとこにいたら風邪引くよ。
試合前なんだし......、帰ろ?」

「ああ......うん......、試合か......そうだね......」


自分が濡れるのもおかまいなしに、背伸びしてにっしーに傘をさすけれど、にっしーはぬけがらみたいになっていて、ろくに反応も返ってこない。


「......にっしー。
今回はレギュラーはもらえなかったけど、試合に出れないって決まったわけじゃないからね?
だ、だってさ、出塁率ナンバーワンのにっしーが出なかったら試合だって......。先生だってそこはちゃんと分かってると思うから、出してくれるよ」


なんて、下手ななぐさめ。

私の方を見ようともしない、ただ呆然と空を見上げるにっしーに何か言ってあげたくて口を開くけど、なぐさめ下手な自分が嫌になる。

ぬけがらみたいなにっしーを見るのが辛くて、傘を持つ手に力が入る。







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