ふりむいてよキャプテン
「なんでレギュラー外されたのか、自分が一番分かってるから、なぐさめてくれなくていいよ。
外されるのも、当然だ......。先生としては、がんばってないやつより、がんばってるやつ使うのは当たり前だよ」

「そんなことない!!」


もうそれ以上聞いていられなくて、思わず大声を出した私の方をようやく見るにっしー。

自分のことをがんばってないやつ、なんて言うにっしーが悲しかった。


「そんなこと、ないもん......。
私はにっしーがどれだけ野球が好きで、どれだけ今までがんばってきたか、ちゃんと知ってるから。
先生が認めなくても、チームメイトが否定しても、私は知ってるから......っ」


涙ながらに言った言葉は最後の方は、ほとんど言葉にならなかった。


雨のせい以上に涙がとまらなくて、顔がぐちゃぐちゃだ。

だけど、そんな私を見つめるにっしーの方が、泣いてないのに泣きそうな顔をしてして、よけいに胸をしめつける。


「なんであみが泣くんだよ......」

「だって、にっしーが......」


泣かないから、そんなこと言うから。

そう言う前に、びしょ濡れのにっしーに抱きしめられて、ビニールの傘が武道場前のコンクリートに転がった。





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