ふりむいてよキャプテン
無言で私を抱きしめるにっしーの背中に、そっと手を回す。


雨に打たれていたにっしーの体はすっかり冷えきっていて、抱き合っていると私まで濡れるけど、そんなことはどうでもいい。


私が何を言っても何をしても、なんのなぐさめにもならないだろうけど、少しでもにっしーを温めたかった。


「今日、家にきて」

「うん、いくよ」


耳元でいつもよりも低い声で言われたにっしーの言葉に、何のためらいもなくすぐに頷く。


今にっしーの家に行くこと、それがどんな意味を持つのかはもちろん分かっていた。

おしゃべりをするためでも、一緒にゲームをするためでもない。


「いいの?今、家にきたら俺......」

「......いいよ、それでにっしーが少しでも元気になってくれるなら。私は、......大丈夫だから」


何も言わないにっしーの体を離して、行くなら早く行こ?あんまり遅くなると私も親に怒られるから、と部室までひっぱっていく。
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