ふりむいてよキャプテン
誰よりも早く部室を出て自転車置き場で待つこと、一時間。その間には野球部員や他の部活の人が次々に帰っていった。


自転車の数もだいぶ減り、日も落ちてきて、さすがに今日はあきらめて帰ろうかと思い始めた頃。

ようやく待ち伏せしているお目当ての人物が、野球バッグを肩にかけて現れた。


「二人ともおつかれさま。待ってたんだ、ちょっといい?」

「......どっちを?」


そう、一人できたわけでなく、先ほどにっしーを呼び出した小野くんとともに二人できたわけで、当然どっちとなる。

小野くんにそう聞かれ、私がどっちと指名するよりさきに、にっしーが口を開いた。


「それはーマサだよ!な?」


なぜにこの期に及んで、私が小野くんを待たなきゃいけないのか。

隣の小野くんをつつきながら、私と視線を合わさないにっしーをまっすぐに指す。


「ううん、にっしーだよ。
小野くんごめん。にっしー借りていい?」
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