ふりむいてよキャプテン
「代わるよ。小野も外野ノック入ってきたら?」


先ほど挨拶をした三年生、元キャプテンのいつき先輩が練習用のユニフォームに着替えて、こちらに歩いてきた。

おねがいします、と小野くんはいつき先輩にバットを渡し、外野手たちの元へと走っていく。


「おひさしぶりです、今日は受験勉強は大丈夫なんですか?」


OBの大学生や社会人になった先輩たちはたまに練習にきてくれることもあるけど、いつき先輩たち三年生はいまは受験勉強真っ只中で誰もきていない。

今日は息抜きの日なのかな。


部活をしていた頃よりも髪が伸びたからか、なんだか前よりも少し大人っぽくなったいつき先輩が手を上げたので、その手にめがけて軽くボールを放った。


「先生にはさっき報告してきたけど、推薦で大学決まったんだ。律命館」

「律命館ですか?すごい!
おめでとうございます!」


律命館っていえば、全国でもけっこう有名な大学。
県内平均レベルのこの高校からだとかなりの出世頭だよね。


いくぞー!とボールをいったん上に上げてから、外野にそれを打ついつき先輩を羨望の眼差しで見つめる。


来年の受験勉強に追われている自分を思い浮かべ、この受験勉強真っ只中の時に、すでに大学を決めたいつき先輩をなんだかうらやましく思った。






< 536 / 604 >

この作品をシェア

pagetop