ふりむいてよキャプテン
学校のグラウンドじゃなくて、野球部専用の特設グラウンド。

しかも、今、試合をしているグラウンド以外にも、横にもうひとつグラウンドがあって、いまも銀月館の人たちが練習している。

そして屋外グラウンドには、夜の練習用のスタジアムみたいな大きな夜間用の照明。


さらに、マシンバッティングができる屋内用の練習場。
ピッチャーが投球する場所は、屋内の専用ブルペンがある。


何から何まで、うちとは違う。


うちなんて、夜は懐中電灯みたいなライトひとつに。
雨の日は体育館か校舎だし、ピッチャーの投球練習はそこらへんの草むらだ。


「おはよ!早いね」


しり込みするというよりも、もはや次元の違う銀月館グラウンドに入れてラッキーくらいに思いながら。

集合場所からは離れたところで試合を観戦していると、お守りのふたつついた黒い野球バッグを背負った学ラン姿のにっしーに声をかけられた。


「にっしーこそ」

「なんか落ち着かなくて」


そう言ってポケットに手を突っ込んだにっしーは、緊張でナーバス入ってるというよりも、むしろワクワクしているといった感じに見える。

キラキラとした目で、にっしーは第一試合が行われているグラウンドに目を向けた。

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