ふりむいてよキャプテン
「......うん、いまちょっといい?
前言ってた返事のことなんだけど」


最後の大会が終わってから返事がほしいとは言ったけど、まさかこんなに早く聞けるとは思わなかった。

というか、試合後の余韻で正直すっかり忘れてたけれど、いいよと返事をする。

私たちのキャプテンの小野くんに。


「本当は一年生の時に手紙もらってから、すぐに気づいたんだ。名前は書いてなくても、部活の日誌とかスコアブックでよく見てた字だったから。

ただ、宮崎さんはマネージャーだったし、にっしーの好きな人だったから、そういう目で見ないようにしてたし、知らないふりしてた」


ぶっきらぼうで低い声、けれどいつもよりも優しくゆっくりと話してくれる小野くんに、そうなんだと相づちをうつ。


「気にしないようにしてても、その時から気になってたのかもしれない。正直に言えば、何回も揺れた。
だけど、やっぱり今はまだまるちゃんのこと好きだし、気持ちの整理がつかないんだ。
待つっていっても、いつまでも待たせてるのも悪いから、ごめん」

「そっか......、分かった。
約束だから、これできっぱりあきらめるね。
正直な気持ちを話してくれて、ありがとう」



ゆっくりと落ちついた声で、話してくれた小野くんに、私も笑顔でこたえる。


ラストチャレンジもフラれてしまったわけだけど、不思議とそんなに悲しくはなかった。


どこかでこうなるって分かってたし、正直に包み隠さずに話してくれたことが何より嬉しい。



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