【完】幸せをくれたあなたに。
「……っ」
遥生くんの頬はみるみるうちに赤く染まっていく。
「遥生くん、どうし……」
「「「きゃー!!!」」」
「あの子! あの子! さっきの子だ!」
「やっと見つけたあっ」
“どうしたの?”と聞こうとしたその声は、お面を外した遥生くんへの女子の歓声にかき消された。
「うおっ!」
と、メガネとお面を手に持ちながら遥生くんは走り去っていった。
女子が一斉に走ってくるのを、私は横にずれて見つめることしかできなかった。
「メガネ……」
持って行かれちゃった……。
仕方なく、前髪で前を隠しながら歩いて行く。
廊下を歩いていると、
「与沢さん! あの、よかったら僕と回りませんか!?」
聞いたことのある名前に、ピクっと私は反応した。
その声の方を見ると、頬を赤くしている他クラスの男の子と驚いている藍那。
グルりと向きを変えようとした時、藍那の声が耳に届いた。
「ごめんね。私……好きな人、いるから」